第263話けがをして、彼は危うく狂いそうになった

「エミリー、どこにいる?」

ダニエルの声には人の耳を貫くような力があり、まっすぐエミリーの鼓膜へ届いた。

もう迷う必要はなかった。彼女は踵を返し、一直線に戻っていく。

ダニエルが助けに来てくれたことは素直にうれしい。けれど、彼の身体の状態を思うと、どうしても不安が胸に差し込んだ。

「ここよ!気をつけて、あいつらはみんな命知らずだから!」

エミリーがダニエルの方へ手を振る。二人の間には説明しがたい結びつきがあった。入り乱れる群衆の向こうでも、互いの気配を一目で捉えられる――そんなふうに。

ダニエルも、振られたその手を見つけた。

ほどなくして二人は合流する。

治安部隊にダニエルが連...

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